『虐殺機関』 伊藤計劃
ー痛いことがわかった。なのに、痛さは感じなかった。ー
主人公クラヴィス・シェパードは、暗殺を任務とする米軍兵士。911以降、先進国がテロを防止するため、管理社会へするなか、後進国では内戦や虐殺が増加。主人公はその謎を握る男、ジョン・ポールを追跡するのだが・・・・
以上がこの本のあらすじです。
この本を読んだ理由は帯に書いてある宮部みゆきさんのコメントに惹かれたからです。
「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない。」
宮部さんがこんなに仰るなら読むしかないですよね!?
さっそく購入です。
感想は、
発展途上国についての考察がおもしろかった。
重要な設定の説明が物足りないかな・・・
こんな感じです。
ニュースをぼんやり眺めていると、時々発展途上国でのテロや犯罪の報道がされています。
それを見て、自分のことのように考えたりする人はあまりいませんよね。
遠い国のことだし、何人が犠牲に・・・と言われても現実感がありません。
そのようなニュースを見ても、私たちは当たり前のように日々を送っていますし、これからもそうでしょう。
このような事象をこの小説は「ドミノピザの不変性」を用いて説明します。
ドミノピザは生まれる前から存在したし、僕が死んでも変わらず営業するだろう。
そんな「ドミノピザの不変性」が確立された先進国の世界で、目まぐるしいほど変転する発展途上国の世界を語ることは難しい。
言い当て妙で納得してしまいました。
しかし、このグローバル社会ではまったく繋がっていないことはないのです。
自分が着ている服、食料、石油や鉱物などの資源。
他にも沢山あるでしょうが、必ずなんらかの関わりはあります。
そして、物語が進むにつれ、その関わりが私たちには見えないのか、それとも意識的に見ようとしていないのか問いかけられていくことになります。
重要な登場人物の発言に考えさせられます。
「人は自分が見ようと思ったものしか見ない。」
たしかに私も自分の見たいものしか見えてないかもしれません。
でも、意識的に都合の良いものだけ見ることは、やめるよう心がけたいと感じました。
また、ネタバレなので書きませんが少し重要な設定の説明が足りない気がします。
まあ、私はSF初心者なのでそう感じただけなのかもしれませんが・・・
これからSFも沢山よむぞ!って思っています。有名なのからよんでいきますね。
ラストは唐突でしたが、私は受け入れられました。
いくつかの批評に書かれていた「アメリカ人っぽくない」ことは同感でした。
5つ星が絶対よんでほしい、1つ星が申し訳ないがつまらなかった、3つ星が普通であるなら
この物語は4つ星です。
戦場が舞台なので、そのあたりの表現が平気であるならば読む価値は十分あると思います。
あと、映画化されるらしいです。